うえだ通信

2023-10-31

出向

昭和55年、私がまだ独身の頃勤めていた岡山の会社から東京の取引先への出向辞令が出た。
岡山の会社の業績は振るわず、出向期間は2年だが人員削減の一環と言える。
出来れば出向先に転籍して欲しいムードだった。
こういう状況だから会社が用意してくれたアパートは当時でも珍しい4畳半一間、風呂なし、トイレ共同だった。
幸い出向先の皆さんは生まれて初めて東京に出て来た田舎者の私を暖かく迎えてくれたのが救いだった。
住まいだけでなく田舎から東京へ、工場勤務から営業職へと環境が激変した2年間だった。
赴任した1週間後、初めて1人で営業車で出掛けた10分後、一方通行違反で自転車のおまわりさんにキップを切られた苦い思い出もある。
しかし、今思えばこの2年間は私にとって人生の大きな岐路に立っていた時期だったと思う。
この東京出向中に当時黎明期だった半導体業界との接点を得ることが出来た。
斜陽の繊維業界から、この後大きく成長することになる。
半導体業界に乗り替えることになったのは運命かなと思う。
意に添わぬ出向だったからだったが将来を迷っている私の背中を強く押してくれたのも出向だった。